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東西の日おめでとうございます!!

今日が東西の日だと聞いて、東西への愛と勢いだけで一本書きました。
やっぱり東西いいですよね・・・好きです、東西。

旭さんが卒業手前くらいの東西です、付き合ってます。
「幸せのカタチ」シリーズのプロローグみたいな扱いになります。(12.11.14変更)
直接的な描写はないですが、そういうコトを匂わす部分がありますので、苦手な方いらっしゃいましたらご注意ください。

大丈夫という方は、追記からお願いします^^!



******************************


午後二時、眠い日本史の授業中、それは静かに訪れた。
一度だけ、短く設定してあるバイブ音は、教師に見つからないようにするため。
今か今かと待っていたそれを制服のポケットの内側から感じて、そっと携帯電話を取り出した。
教師に見られないように、机の下でいじるその画面には、一通の未読メール。差出人には、見慣れた三文字が並んでいる。

「・・・そっか。」

俺は短い文章を打つ。こっそり、こっそり。
終わったら、それはまたポケットにしまった。すぐにまた一つ鳴ったバイブ音は、知らないフリをした。





きっとずっと、幸せ。





放課後、日直の号令に合わせて、教室から飛び出した。
寒い冬の廊下を、ぱたぱたと走っていく。暖房のきいた教室と違って、昇降口は冷たい空気が充満していた。
しかしそれも、下校する生徒が集まれば人の熱気で温度は上昇していく。
俺はまだ人がほとんどいないそこで、大急ぎで靴を履き替えて部室を目指した。今日は誰よりも一番に、部室に着きたかったから。
待っている、人がいるから。
グラウンドを突っ切って、部室棟の外階段をカンカンと音を鳴らして駆けあがる。
男子バレーボール部、と書かれたプレートのあるドアを勢いよく開ければ、大きな背中とぴょこりと見えるお団子があった。

「旭さん、合格おめでとうございます!」

ドアを開けると同時、本人が振り向く前に、その言葉を投げかけた。
突然開いた扉と俺のデカイ声、どっちなのか分からないが、目の前で本を読んでいた旭さんはびっくりした顔をこちらに向けた。

「に、西谷、びっくりした。」
「はい、メール見たんで、走ってきました。」

そんな、別にゆっくり来てよかったのに。
ちょっと眉を下げながら、困ったような微笑みを浮かべる旭さんに、「だって一番に言いたくて!」と返した。
旭さんは、またキョトンとした後、さっきよりもずっと柔らかい笑みを浮かべた。

「うん、ありがとう西谷。」
「よかったですね、第一志望のとこだったんでしょう?」
「うん、なんとか決まって、よかった。」

試験が難しかったと、受験日の夜に言っていた。だめかもしれないな、なんて落ち込んでいた旭さんに、そんな弱気でどうするんだと叱咤したのは先月のことだ。
旭さん、すごい頑張ってたじゃないですか!絶対大丈夫です、だから堂々と待ってればいいと思います!
そう断言するように言えば、西谷がそう言ったら、そんな気がしてくるかも、なんて言って笑っていた。
電話越しに聞く旭さんの声が、少し元気を取り戻したことに、ほっとしたのを覚えている。

「西谷のおかげだと思ってるよ。」
「俺、なんもしてないっすよ!」
「ううん、何度も西谷に、背中押してもらった。」

だから、ありがとな。
旭さんの手が、そっと俺の頭を撫でる。俺はなんだか、胸がぎゅうっと締め付けられるような感覚に苦しくなった。

「・・・あ、旭さん。もうすぐ、みんな来ると思います。」
「ん、そっか。」
「今日、練習、出ますか?」
「そうだな、監督と先生にも、ちゃんと報告したいし。」

着替えましょうか、と促したら、大きな手のひらは俺の頭から離れていった。それになんだか、ほっとする。
旭さんの温もりが近すぎると、やたらに不安になるなんて、変な話だ。でも、今日はなんだか、落ちつかない。近ければ近いほど、不安になる。

学ランを脱いだら、外から騒がしい声がする。少し高い少年らしい声と、それより低い男っぽい声。
これは日向と影山だなと、すぐ分かる。もうあと十数秒もすれば、このドアは開くだろう。
そう思った瞬間に、ぐいっと右側にいる旭さんに腕を引かれる。へ、と振り向けば、屈んでいるのかすぐ傍に顔があって、心臓が飛び跳ねた。

「あ、さひさ・・・」
「西谷、お願いがあるんだけどさ。」

耳に唇が寄せられて、びくっと身構えてしまう。その唇は、小さな吐息のような声を、俺の脳に反響させた。

――今夜、うちに泊りに来てくれないか?

低く、囁くような、甘ったるい声。こんなの、反則だ。
こんな風に言われてしまえば、肯定以外の言葉なんて、出てくるはずがないじゃないか。
じんじんと熱を持つ右耳と、抑えようもない早鐘を打つ鼓動に、静まれって念じながら、旭さんを見つめる。
甘くて、優しくて、でも男くさくて色っぽい。この表情に、弱い。付き合いだしてから知った、旭さんの男の顔。

「はい、分かりました。」

なんとか絞り出した返事は、同時に開いたドアと一年コンビの大きな挨拶にかき消されたけど。
見上げた旭さんが、満足そうに微笑んでいたので、きっと伝わったんだろう。




練習が終わって、みんなで旭さんに肉まんをおごって、一緒の電車に乗って旭さんの家にやって来た。
よく考えたら、今日って家族でお祝いとかしないのかなって思ったけど、旭さんがいいからいいから、と言うのでそのままついてきてしまった。
おばさんにすみませんと言ったけど、西谷くんなら大歓迎だって笑ってくれた。
おいしいご飯を食べて、順番にお風呂に入る。先に入って、旭さんを部屋で待つ。なんだか、緊張する。
今までだって、何度も泊りに来ているし、肌だって重ねているけど、旭さんから誘われれば何度目だろうとどきどきするんだ。

「西谷、お待たせ。」

長めの髪を下ろした旭さんが、部屋の中に入ってくる。
ベッドの傍に座り込んでいた俺の、すぐ隣に座った。距離が最初から近くて、平気な顔をしながらも、内心はずっと焦っていた。

「今日は、急に誘ってごめんな。」
「や、そんな・・・」
「今日はどうしても、西谷と一緒にいたかったんだ。」

そう言って、左肩に旭さんの頭が預けられた。ドライヤーはしたみたいだけど、まだ少し湿り気の残る髪は、シャンプーの匂いがする。
身体の左側が、緊張で固くなっているから、右手をのばして、旭さんの長い髪をもて遊ぶようにしながら、ゆるゆると撫でた。
ゆっくり、ゆっくりと。

「お疲れ様でした、旭さん。」
「うん・・・。」

しばらく、そうやって過ごしたけれど、不意に旭さんが頭を持ち上げる。
その表情は、部室で見たあの顔よりも、ずっと色を含んでいる。

「西谷、明日は練習ある?」

明日は、土曜日。練習は、午後から。だから、朝はそこまで早くない。

「うん、分かった。」

そう言って、旭さんは俺の両脇の下に手を入れる。そのままぐいっと持ち上げて、ベッドの上にずり上げた。
ぎしり、とスプリングが鳴る。視界がくるりと回って、今見えるのは、俺を見下ろす旭さんと天上の蛍光灯。
影を作った旭さんの顔を見れば、これからのことなんて考えなくても本能で分かる。

「西谷・・・いい?」

近づく顔に、俺はこくりと一つ頷く。

「っ旭さん・・・!」

名前を呼ぶ声は、どうしてと思うくらいに必死だった。
早く、旭さんを感じたい。旭さんで俺の頭も身体も、いっぱいにしてほしい。
旭さんが、この身体の中にいるということ、俺の一番近くにいることを、確かめさせてほしい。
そうして心を押しつぶすみたいなこの不安から、早く解放されたくて、抱きつくみたいに、せがむみたいに手を伸ばした。




隣で眠る旭さんは、少し身体を丸めるようにして、静かな寝息を立てている。
見えるのは、背中だけだ。それが寂しさを掻きたてて、ずきんと胸の奥が重くなる。
こんな風に、俺はずっと旭さんの背中を見てきた。
そしてこの背中さえ、あと一カ月もすれば、俺の前からなくなってしまう。
だって、もうすぐ旭さんは卒業してしまうから。俺を残して。
それはもう、どうしようもない決定事項だ。
俺は後輩で、旭さんは先輩で、俺たちはただの高校生で。
誰しもが通る、どこにだってありふれた別れのはずだけど、それは俺の心に大きな穴を開けていくだろう。

だって、旭さんが卒業したら・・・もう、今までみたいに会うことはできない。
教室にも、屋上にも、部室にも、体育館にも。電車を待つ駅のホームにも、学校に続く坂道にも。
学校のどこにも、この町のどこにも、旭さんはいない。
物理的な距離が、心の距離を決めるなんて思わないし、思いたくないけれど。
その温もりを肌で感じることは、出来なくなるんだ。その事実が、俺の後ろから、そっと不安を押し付けてくる。

「旭さん・・・。」

小さな声で、名前を呼ぶ。気付いてほしいような、そのまま眠っていてほしいような、ぐちゃぐちゃの心のままで。
でも、目の前の大きな背中はぴくりと反応して、ゆっくりと身体が反転する。
少し寝ぼけ顔で、重そうにとろりとした瞼を持ち上げて、なあに、と返事をする。

「旭さん、俺、旭さんのこと、ずっとずっと、好きです。」
「・・・どうしたの?急に。」

嬉しいけど、なんて付け足して、今度は強くてたくましい手が俺の肩から背中に回る。擦れるシーツの音と一緒に、二人の距離が縮まった。
吐息がかかりそうな距離で、旭さんが俺を見つめている。その目には、今は俺しか映っていない。
旭さんの瞳の中に映り込んだ俺の顔は、情けない顔をしてるんじゃないか。薄暗いこの部屋じゃ、分からないけど。

「俺も、西谷が好きだよ。」

細められた垂れた目尻が、ちょっと低くて優しい声が、夜の帳に溶けて消える。
背中に回った手は、ゆっくりと呼吸に合わせるように、俺の背中をさする。
まるで、小さな子どもをあやすみたいに。子ども扱いは嫌だけど、この手はどうしようもなく愛しかった。

「旭さん・・・。」

ずっと、一緒にいたいです。

その言葉は、言えないけれど。だって困らせてしまうのは分かってる。
旭さんは、もうこれからの道を、自分で選んで決めているんだ。遠く離れるという選択をしたのは、他ならぬ旭さんだ。
相談は、された。俺の気持ちも汲んでくれようとした、旭さんの優しさ。
でも、俺に何が言えるっていうだろう。俺にできるのは、ただ「頑張ってください!」と背中を押すことだけだった。
「来年、追いかけます」と宣言したけれど、それだって、旭さんが本当はどう思ってるか分からない。
離れていくことを決めた旭さんが、俺とのことを、どうしていきたいかなんて。俺はなんにも、知らないから。

「ねえ、西谷。」
「・・・はい?」

また、旭さんの声が降ってくる。
夢でも見てるみたいに、目をつむったまま、音を紡いでいく。

「春になったら、花見をしようか。」

隣町の公園は、桜がいっぱい咲くから、二人で桜を眺めながら散歩して。お団子を食べるのも、いいね。

「夏になったら、海に行って。」

たくさん泳いで、遊んで、夜は花火もしようか。日焼けしたら真っ赤になる西谷は、次の日困っちゃうかもしれないね。

「秋になったら、お月見でもするかな。」

紅葉狩りでもいい、季節がいいから、遠出しよう。俺たちを知らない人ばかりなら、手を繋いで歩いても大丈夫。

「お正月は、初詣も行かなきゃ。」

西谷は受験だから、合格祈願もしなきゃいけないね。風邪引かないように、ちゃんと厚着するんだよ。

「そうしたら――」

また一緒に、バレーをしよう。

「・・・。」
「ねえ西谷。そういう未来は、どうかな。」

楽しそうだと、思わない?

閉じていた旭さんの瞳が、俺を捉えて、目の前ですっと細めらる。こつん、と俺の額に旭さんの額が触れた。

「俺は、旭さんと一緒なら・・・きっと、ずっと、なんでも楽しいです。」

そう言って、ぎゅうっと首に手を回して抱きついた。
距離なんて一ミリだってないくらいにくっついて、規則正しい旭さんの心臓の音が、何も隔てずに俺の中に響いてくる。

「うん。俺も、西谷さえいてくれたら、きっとずっと、幸せだよ。」

そっと、寄せられた唇をそのままに受け入れた。温かくて、少し厚いこの感触は、俺だけのものだ。
これからずっと、俺だけのものだ。

「旭さん、好きです。」
「うん、俺も好きだよ。」

合格、おめでとうございます。

今日、二度目の台詞。でもその心は、全然違う。さっきみたいに、不安を消したくて勢いで言ってしまった言葉じゃない。今度こそ、心からの「おめでとう」だ。

「ありがとう、西谷。」

微笑んだ旭さんの顔を見て、少し泣きたくなったけど、そんな涙はいらないから。おれはまた、ぎゅうっとその胸に顔を押し付けた。
旭さんの温もりを、旭さんが描いてくれた未来を、ずっとずっと、覚えておけるように。


*************************************
二人で、ずっと一緒に歩いていこう。

未来に不安になる西谷くんと、未来の約束をくれる旭さんでした。
めずらしく旭さんのが余裕がある感じでしょうか。多分、西谷くんは置いていかれる側なので余計に寂しさが大きいのかな、と思います。
それにしても、こんな日くらい幸せいっぱいの話を書けよと自分に言いたいです・・・幸せで砂糖吐きそうなのを、一本くらいは!

ではでは、ここまでお付き合いくださってありがとうございました^^!


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紅葉はるか
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