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とりあえずそれぞれの出会い編です。

烏野視点で、スガさん編・大地さん編・旭さん編の三本立て的な感じです。
短めのさらっとしたヤツで、設定に書いたところまでなので内容大体かぶってます。

よろしければ、追記からどうぞ~!



********************************


新緑がまぶしい四月、故郷から遠く離れた街にやって来た。
どこにいっても人が溢れ、喧騒と目まぐるしく変わる風景。
今までいた温かいところとは全く違うこの場所で始める、新たな生活。

そして互いの道が一つ、また一つと交錯していく。それはまるで、運命のように。






そして再会は訪れる。








「スーツってなんか動きにくいよね。学生服とはやっぱ違うよ。」
「はは、着慣れてない感は仕方ないよな。」
「はあ、緊張する・・・。」
「お前は全然着慣れてない感ないな。むしろ馴染みすぎっていうか・・・新入生に見えない。」
「俺だってスーツなんか全然着ないぞ!?」

朝の8時半。場所は大地が大学の近くの町に借りたアパートだ。
今まで暮らしていた実家の自室程度の広さに、キッチンと風呂、トイレが申し訳程度についた小さな部屋。
そこが大地にとって新たな生活の場であり、初めてする一人暮らしの舞台でもあった。
今日は大学の入学式で、前の日から三人で泊って一緒に会場に行くことを決めていた。
お互いにまだ、一人暮らしに不安があるので、何かと理由をつけては集まっている。

「あ、俺そろそろ出ないと。」
「そか、スガはちょっと遠いもんね。」
「じゃあ俺らも、ちょっと早いけど出るか。」

大地と旭は一緒の大学だが、スガだけが別の大学に進学した。
同じ理系クラスだったし、一緒のところに進もうという話も出ていたのだが、スガが進みたい学科が大地たちの大学にはなかった。
そこを曲げてまで一緒に、ということを言える理由も大地は持ち合わせていなかったので、結果として二人は別の道を歩むことになった。
一方、旭は一人文系クラスにいたが、総合大学であるために大地と同じ学校になった、というわけである。

「なんか、こうして歩いてると、朝練に行ってるときみたいだよな。」
「はは、言えてる。後ろから、日向と影山が競争するみたいに走ってきたりね。」

しかしそれはもう半年以上も前のことで、三人で連れだって歩く道は、今まで慣れ親しんだ烏野の坂道ではない。
お互いにそれが分かって、なんとも言えない気分になる。つい、楽しかった日々をまだ懐かしんでしまうのだ。
駅に着き、スガが一人で別方面の切符を買う。

「じゃあ、まあまたね。近いし、すぐ会うと思うけど。」
「おう、頑張れよスガ。」
「何を頑張るっての。ふふ、じゃあ大地と旭もね。」
「また、連絡する。」
「うん、またね。」

ホームの前で手を振って別れる。もう一緒の学校に行くことはない、そんな当たり前のことを大地は改めて感じた。






act1. スガの場合

大地と旭と別れて、スガは電車に乗り込む。朝の通勤ラッシュがピークの時間は過ぎたとはいえ、地元ではありえないような混みようだった。
そして何より、今まで当たり前みたいに隣にいた二人の姿はない。これからは、一人。
そんなことを考えると、大学生活が楽しみなのと同時に不安に感じてくるのだった。

大学の最寄りの駅名がアナウンスで流れる。人の波を分け入るようにドアを通り抜け、自動改札をくぐった。
そこに、自分より一回り小さなスーツ姿を見つける。ここにいるということは、自分と同じく新入生だろうか。
それにしても、この後ろ姿、なんだか見覚えがある気がするんだけど・・・。
ゆっくりめに歩くイヤホンをつけたその後ろ姿を追い越すときに、ちらりとその顔を見た。その瞬間、思わず声が出てしまった。

「あ!音駒の・・・!」

ばっと口を手で覆ってみたが、すでに遅い。イヤホン越しでも何かしら聞こえたのか、大きな目がスガの方を見上げた。
同時に、向こうも「あっ」と小さな声を漏らす。ぱっとイヤホンを外して、お互いにしっかり向かい合う形になった。

「烏野の、セッターだよね?確か、菅原くん?」
「そ、そう。音駒のリベロの・・・夜久くん?」

久しぶりだね、と夜久が笑った。つられて、スガの頬も緩む。
去年のGWの合宿で練習試合をしたときに、チーム内での立場に似たところを感じて、親近感が湧いていた彼だ。
そんな彼と、まさかこんなところで再会すると思わなかった。

「びっくりした、大学はこっちに来たんだ?」
「うん、そう。夜久くんもしかして、M大?」
「そうそう!え、何、やっぱり今日ここにいるってことは、一緒?」
「一緒だよ。うわ、すごい偶然!」

ホームでわっと盛り上がってしまい、はたと気付くと行き交う人々の視線がちらちらとこちらを向いていた。
少し恥ずかしくなって、お互いにごめんと呟いて苦笑する。

「とりあえず、学校行こうか。」
「うん。」

受験などで何度か来たことはあったが、学校までの道をちゃんと覚えているか不安だったスガにとって、夜久の存在は大きい。
地元だからか、こっちだよ、と迷う様子もなく案内してくれる夜久はとても頼もしかった。
二人でまばらな人通りの道を歩きながら、スガがふっと呟いた。

「でもよかった、夜久くんがいて。」
「え?」
「俺、こっちに知り合いとかいないからさ。他のメンバーは、違う学校だし、ちょっと不安だったんだ。」

半歩前を歩く夜久にそう言えば、俺もよかった、と笑った。

「俺も、他のバレー部の奴や友達と学校別れたからさ。家もちょっと遠いから、一人暮らしだし。知り合いいないなって思ってたから。」
「じゃあお互い、よかったってことで。」
「うん。」

また目を見合わせて、笑いあった。朝の不安が消えるみたいに、穏やかに落ちついた気持ちになる。
それからは、話がどんどん弾んで、初めて試合した合宿の話から始まって、バレーのこともそれ以外のこともたくさん話した。
その中で、一緒の学部であることや、烏野と音駒の三年はみんな都内に進学していることなどが分かった。

「今度は、音駒と烏野で一緒に飲んだりできるといいな。」
「はは、楽しそうだな、それ。」

楽しい未来予想図を描く二人の前に、ちょうどこれから通う大学が見えてきたのだった。






act2.大地の場合

同時刻、旭と大地はまだ人もまばらな大学の体育館前に到着していた。
スガに合わせて早めに出た二人は、入り口付近のベンチに座る。会場に入ると学部別に別れるので、もう少し人が来るまでは待つことにしたのだ。
紙コップのコーヒーを飲みながら、大地は長く息を吐いた。それに旭が反応する。

「どうしたの?」
「別に。」
「スガのこと、心配?」

こいつは時々勘がいい。自分のことだと鈍いくせに。
まああっちは一人だからな、と適当な答えを返す。旭は別段気にすることもなく、そうだよなーなんて相槌を打った。
ぱらぱらと通っていく人たちをぼーっと眺めていたところに、旭が何か気付いたらしい。
どうした?と聞くと、右前方を控えめに指差した。

「あの人、見たことない?あのデカイ人。」
「お前にデカイとか言われたくないだろ・・・ってマジでデカイな。」

190くらいあるんじゃないだろうか。一つ頭が飛び出たその黒髪は、後ろから誰かに呼びとめられているのかこちらに背を向けている。
あの少し特徴的な髪型は、確かに見覚えがある。少し逆立てたようなシルエット。なんだっけ、あの・・・

「「トサカヘッド。」」

旭と二人で顔を見合わせる。
ハモった言葉は、確かに去年の合宿のときに聞いた、二つ年下の後輩の言葉だ。

「えと、つまり・・・」
「音駒の主将なんじゃねーの?」

だよね、と呟く旭に頷いて返す。確証はないが、あの身長とあの目立つ髪型とを考えれば、多分そうなんだろう。
そうこうしているうちに、会話が終わったのか例のトサカヘッドがこちらを向く。
顔を見て、やっぱりと納得した。あのつり上がった細い目は去年見たのと変わっていない。
思わずじっと見てしまっていたこちらに、向こうも気付いたらしい。
一つ首をひねったあと、ああと思い至ったように少し早足で近づいてきた。
座った俺たちの前に立つその姿は、黒いスーツと相まってなかなかに威圧的だった。

「烏野の主将とエース、だよな?」
「ああ。音駒の主将とこんなとこで再会すると思わなかった。」
「大学、出てきたんだな。あれ、もう一人は?あの控えにいたセッターの子も、三年だろ?」

アイツは地元なの?と聞かれたので、都内に進学しているとだけ伝えた。
音駒の他の三年も、どうやら都内に残っているらしい。

「君ら、中に入らないの?」
「そろそろ入ろうと思ってたとこだよ。」

な、と旭の方を見れば、話の間中泳ぎがちだった視線がこちらを向いてこくこくと頷く。
何びびってんだよ、このへなちょこ。そんなんだと舐められるだろうが。
バシッとひとつ旭の背中を叩き、行くぞと立ちあがる。黒尾も一緒に動き出したので、流れで三人並んで入り口に向かうような形になった。
俺だって割と身長は高い方だが、この二人に挟まれると、なんだか小さく見える気がする。
というか、なんか視線が痛い。まあ、こんなデカイ男が三人も並んでたら嫌でも目立つんだろうけど。
受付を済ませたところで、旭は人文学部の席の方へ行くので別れることになった。

「あ、じゃあ俺こっちだから。」
「おう、じゃあまたな。」

頑張れよへなちょこ、と肩を叩けば、痛いと小さく抗議の声が返ってくる。
もう、とため息をひとつ吐いて去っていく旭を見送ったところで、やっぱり横にいる黒尾に目を向けた。

「アンタも、自分の席の方に行かなくていいのか?」
「行ってるよ?俺も理学部だから。」
「げ・・・。」
「これからどうぞよろしく、澤村クン?」

あの食えないにこにこ笑顔ではなく、にやりとした悪そうな笑顔を見せる黒尾。きっとこれが、コイツの本当の顔なんだろう。
俺もあのときと同じような笑みは返さずに、引き攣った笑顔で「こちらこそ、黒尾サン?」なんて微塵も思ってない返答をした。
コイツは初めて会ったときから合わないと、しかしある意味ですごく近いと感じていた。いわゆる同族嫌悪というヤツだ。
これからはコイツと付き合うことも多いのだろう。そんな予感がする。
一緒の学部、そしてこうして今、隣の席に座っているところを見る限り、一緒の学科なんだろう。
バレー部にでも入れば、おのずと学校にいる間中、行動パターンが被るに違いない。
あの時みたいに、止めに入るスガやリベロの奴はいないのだから、これからが本当の腹の探り合いだ。
はあ、先が思いやられる――と思ったことは、そっと胸の内に隠して、学長の退屈でありがたい祝いの言葉を聞くのだった。






act3.旭の場合

学校が終わった夕方、旭は学校から三駅離れた町を歩いていた。そこは初めて降りる駅で、飲み屋なども多い、いわゆる繁華街だった。
駅前の雑多なビルや派手な建物がある通りを一本裏に入って少し進んでいけば、だんだんと町並みは落ちついてくる。
駅から徒歩5分、それが旭の目的地だった。

「ここで、合ってるよな。」

渡された地図と、店の名前を確認する。「Licht」と書かれたそこは、落ちついた佇まいのカフェバーだった。
ごくり、と唾を飲み込んで、ドアのノブに手を掛けた。

――え、バイトの紹介、ですか?

――そうそう、東峰くん、さっき探してるって言ってたじゃない。私の知り合いが、人探してるのよ。

それが三日前のことだ。入学式から一週間、学部の新歓に参加していた俺は、同じ学科だという女性の先輩と話をしていた。
先輩はとても元気で、くるくると表情を変えながら、一人でもどんどんと会話を進めていた。
もともと自分から話すのはそんなに得意ではないので、こういうタイプの人のペースに巻き込まれることが多い旭だった。

「東峰くん、ホントに落ちついてる感じね。新入生には見えないわ。」
「はあ、まあ学生に見えないっていつも言われます。」
「ははっ確かにね。でもさ、そんな君にいい話があるのよー!バイト探してるんだよね?」
「ええ、まあ。」
「じゃあさ――」

こうして、先程の会話に結びつくのであった。
ドアを開けると、左側にあるカウンターの向こうに、30代くらいの男性が立っていた。

「いらっしゃいませ、今は準備中なんですが――」
「あ、あの、バイトの面接に来た東峰といいます。」
「ああ、君が!そうか、なるほど言われてみれば聞いてた通りの見た目だね。」

聞いてた通りって、どんな風に聞いてたんだろうか。あまり聞きたくないかも、と思いながら店の奥に歩を進めていく。
カウンターの向こうの、「STAFF ONLY」と書かれた扉が開いて、その奥にあった小さな丸椅子に座らされた。

「ぜひ、働いてほしいんだ。今ちょっと人が足りなくてね。」
「あの、キッチンの方を希望したいんですけど・・・」
「え、ああ!ごめん、キッチンはちょっと前に埋まっちゃったんだよねー!あの子に言ってなかったわ、ごめん。」
「え、じゃあ・・・」
「うん、悪いけど、ホールの方で入ってくれる?」

えええ、と困惑した旭だが、オーナーの推しの強さでどんどんと話が進められていく。結局は、こういうパターンで承諾することもまた、昔から多いのだった。
今回もそれと同様に、結局ホールスタッフという形でバイトをすることになった。

「じゃあ、さっそく明後日から入ってね。あ、今いるスタッフ紹介しとこうか。最近入った子もいるんだよ。」

カイくん、と呼ばれて隣の厨房から現れた顔を見て、旭は目を見開いた。
同じように、顔を出したその人も、旭の顔を見てびっくりしていた。

「海くん、彼、明後日からバイトに入ってもらう東峰旭くん。君と同じ大学一年だから。」
「あ、はあ。」

海が曖昧な返事を返したところで、店内の電話が鳴った。それを店長が取り、会話を始める。
どうも話込んでいるらしく、手持ち無沙汰な状態で海と旭は並んで立っていた。

「烏野の、エースだよね?大学、こっちに来たんだ?」
「は、はい・・・。」

うお、焦って思わず敬語になってしまった。あたふたする旭に、海はふっと笑いかける。

「同期なんだし、敬語じゃなくていいって。」
「そ、そだね・・・」
「バイト、一緒になるなんてびっくりした。俺も入ったばっかで分かんないこと多いけど、なんでも聞いてくれていいから。頑張ろうな。」
「は、う、うん。」

ああ、この人、すごい優しい人だなー・・・

先週の入学式以降、学部の授業以外ではなんだかんだで大地と黒尾と一緒にいることが多い旭だった。
まだ知り合いも少ないし、大地は気の置けない関係だ。一緒にいられるのは、旭としてもありがたかった。
しかしそうは言っても、如何せん大地は旭にキツイ。しかも緩衝材になってくれていたスガはおらず、代わりにいるのは黒尾である。
黒尾とも普通に話は出来るのだが、ただあの、腹の中で何考えてるのか分からない感じがどうにも不安を掻き立てられるのだ。
慣れるまでまだしばらく掛かりそうだな、とため息をつきたくなるのが本当のところだった。
学校生活がそんな風である旭にしたら、海の気遣いのある言葉や柔らかい物腰は、菩薩級にイイ人に見えるのだった。

「えーと、海・・・くん?」
「うーん、くんとかいらなくない?」
「あ、そか。」

じゃあ、海?
そう聞いたら、おうと笑って頷いた。それを見て、安心したように旭も笑う。

「東峰、なんか見た目と全然違うのな。」
「う、よく言われる。」
「はは、でもイイ奴そうでよかったよ。」

それはこっちの台詞です、と心の中で旭はつぶやいた。
先輩にすすめられるままに面接に来て、予想外にホールスタッフになってしまったけれど。
思わぬいい出会いがあって、このバイトいいかもしれないと、いつになく前向きになれた旭だった。



**************************************
それぞれの出会い、一年生の4月のお話。

あと、旭さんと海さんがバイトするお店「Licht」は「リヒト」と読みます。
ドイツ語で「光」という意味だそうで。オーナーさんが理人さんという名前なので、掛けてるそうです。
まあ本編に全く関係ない設定ですが(笑)

これから、この面子が過ごす日々を形にしていけたらなと思っています。
ここまでお付き合いくださってありがとうございました^^!

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